Jeux de mots

今月のことばあそび

毎月変わるお題と文字数に合わせて、自由に自己表現を楽しむ場所

人さらい(Les Voleurs d’enfants)

Kazu Fujimoto

裸も同然の格好で、いきなり
泥やイラクサの罠から飛び出してきて
ジプシーの女たちが、サーカスのために
伯爵の息子をさらってゆく。

母親は、狂ったように
通りで立ちすくみながら
子供を呼ぶが、彼は梯子の高みにいて
サーカスで飛び方を習っている。

人は何歳だって飛べるもの
サーカスとは一つの凧のよう。
テントの上、ロープの上、
人さらいが飛んでいる。

さらわれた者も、さらう者も翼を持つ
夜、土手の向こうで
母親が叫んでも
もはや届かない。

戻っておいで、私の坊や、私の可愛い天使!
この苦しみにお情けを!
しかし子供は耳を貸さず、
子供さらいの美味しいスープをすすっている。

四度の晩を過ごし、苦いワインの一撃が
彼の首を断つ、
スープ皿のそばで、
彼の頭は大海を転がる。

飛ぶことは夢を習慣づける。
子供は、夢見る
道端にそびえる恐ろしい像を、
その手で飛ぶ〔さらう〕像を1

サーカス芸人はよく詩の世界に登場する。コクトーの詩では、この芸人が「voler(飛ぶ/盗む)」の言葉遊びとともに登場する。

旅芸人が子供をさらうという悪評は当時しばしば耳にされていたようだ。この詩ではさらわれた子供が、そのまま芸人になっていく過程が綴られるが、必ずしも悲観的な調子を帯びていない。サーカスの世界が社会から切り離された自由な空間であるなら、さらわれた子供は、親が象徴する社会から正に飛び立っていくのである。しかしそれは彼の人さらいの未来をも予告する。

原文を読むとその言葉遊びがよく分かる。「Volent les voleurs d’enfants」などは不思議な言葉の接続に驚くし、「Quatre fois le sommeil lui coupe / Le cou à coups de vin amer」などからもリズミカルな音の遊びが垣間見られる。

この詩はコクトーの朗読が聞けるので(しかもジャズバンドつき!)YouTubeなどで探してみて欲しい。 

  1. Jean Cocteau, Œuvres poétiques complètes, éd. Michel Décaudin, Paris, Gallimard, coll. « Bibliothèque de la Pléiade », 1999, p. 538-539. 日本語訳は筆者による。 ↩︎